先日より、相続税、贈与税の基礎の部分について記載してきましたが、税金についてはこの他にも幾つかあります。
その中でも、今回は不動産を譲渡したときに係る所得税・住民税について、記載していきたいと思います。
土地・建物の譲渡に係る所得税・住民税とは、個人が土地や建物などを譲渡したときに生ずる所得であり、これを譲渡所得といいます。
この譲渡所得に対して、他の所得と分離して所得税と住民税(都民税・区市町村民税)が課税されます。
この譲渡所得の特徴は、その対象となる土地などの所有期間によって支払う税金の金額が変わってくることです。
①5年を超える場合・・・・・長期譲渡所得
②5年以下の場合・・・・・・短期譲渡所得
と分けられます
※譲渡した年の1月1日現在での期間
計算のしくみ
〔1〕課税譲渡所得
譲渡所得+(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得
●取得費
売った土地や建物を買い入れた時の購入代金や購入手数料などです。
実際の取得費が不明または、収入金額の5%未満の時は、譲渡価格の5%とします。
●譲渡費用
土地や建物を売るために直接支出した費用で仲介手数料、登記費用、測量費用、借家人を立ち退かせる場合の立退き料です。
●特別控除額
次のいずれかに該当する金額です。
①収用対象事業のために土地や建物を譲渡した場合・・・・・・・・5,000万円
②自分が居住している家屋やその敷地を譲渡した場合・・・・・・・3,000万円
③特定土地区画整理事業などの為に、土地等を譲渡した場合・・2,000万円
④特定住宅地造成事業などの為に、土地等を譲渡した場合・・・・1,500万円
⑤農地保有の合理化などの為に、農地などを譲渡した場合・・・・・800万円
上記①~⑤は、長期・短期どちらの譲渡所得からも控除することができます。
複数の要件に該当すれば重複して控除することができますが、その場合は5,000万円が上限です。
〔2〕税額計算
①長期譲渡所得の場合
税額=課税譲渡所得×税率(※)
※長期譲渡所得の税率
譲渡の時期 平成16/1/1~ 平成11/1/1/~平成15/12/31
税率 所得税15% 住民税20%
住民税5% 住民税6%
②短期譲渡所得の場合
(1)平成15年12月31日までの譲渡の場合
次のアかイのいずれか多い金額が、税金となります。
ア.課税譲渡所得×(所得税40%・住民税12%)
イ.(ⅰ-ⅱ)×110%
ⅰ.{その他の課税所得(※1)+課税譲渡所得-50万円}
×税率(※2)
ⅱ.その他の課税所得(※1)×税率(※2)
※1.その他の課税所得とは、給与所得や事業所得など所得の
合計額から、基礎控除や扶養控除などの所得控除を
差し引いた額です。
※2.税率は所得税・住民税の速算表により求めます。
●所得税の税率(速算表)
課税所得金額 税率 速算控除額
330万円以下 10% -
900万円以下 20% 33万円
1,800万円以下 30% 123万円
1,800万円超 37% 249万円
●住民税の税率(速算表)
①都民税の税率
課税所得金額 税率 速算控除額
700万円以下 2% -
700万円超 3% 7万円
②区市町村税の税率
課税所得金額 税率 速算控除額
200万円以下 3% -
700万円以下 8% 10万円
700万円超 10% 24万円
(2)平成16年1月1日以後の譲渡の場合
課税譲渡所得×(所得税30%・住民税9%)
(3)特例
◎居住用財産の買替えの特例
①特定の居住用財産を買い換えた場合
平成18年12月31日までに、以下の要件に該当する居住用財産を譲渡して、代わりに住宅を取得した場合には、譲渡資産の売却価額から新しい住宅の所得価額を差し引いた額に課税されます。したがって、買換資産の取得価額が譲渡資産の売却価額を上回るときは、課税対象となりません。
〈適用要件〉
ア.譲渡資産、買換え資産ともに日本国内にあること。
イ.譲渡した年の1月1日において、譲渡した居住用財産の所有期間が
10年を超えていること。
ウ.譲渡した年の前年から譲渡した翌年までの3年間に、買い替える
住宅を購入すること。
エ.買換えた住宅に、譲渡した年の翌年12月31日まで(※)に
入居すること。
※譲渡した年の翌年に取得した場合は、取得した翌年の12月31日まで
オ.居住用財産の譲渡に関する3,000万円控除など、
他の特例を受けていないこと
カ.譲渡先が親族などの特別の間柄でないこと。
キ.譲渡する日現在で、居住期間が10年以上あること。
ク.取得する家屋の床面積が50㎡以上280㎡(※)以下であること。
※平成13年3月31日以前の譲渡については240㎡以下
ケ.購入する土地の面積が500㎡以下であること。
コ.購入する住宅が耐火建築物の中古住宅である場合には、
新築後の経過年数が25年以内(※)であること。
(一定の耐震基準を満たす平成17年4月1日以後取得する
耐火建築物を除く)
※平成13年3月31日以前の譲渡については、20年以内
②相続等により取得した居住用財産を買換えた場合
父母または祖父母から相続や遺贈により取得し、30年以上自己の居住の用に供していた家屋や、その敷地を譲渡し買換えた場合には、①のア.からコ.の要件に該当していれば、買換えの特例が適用出来ます。
③特定の居住用財産の買い替えの場合の譲渡損失の繰越控除制度
特定の財産の買い替えで譲渡損失が発生した場合には、譲渡した年の翌年以降3年内の各年分(住民税の場合は、譲渡した年の翌々年度以後3年度間の各年度分)の総所得金額から、譲渡損失の金額を控除することができます。
また、当該譲渡資産の譲渡による所得以外の所得との通算及び翌年以降の繰越しを行うことも出来ます。
主な要件は下記の通りです。
〈適用要件〉
ア.譲渡した年の1月1日現在で、所得期間が5年を超える個人の居住用財
産であること。
イ.平成10年1月1日から平成19年12月31日までに譲渡していること。
ウ.譲渡した年の前年1月1日から翌年12月31日までの間に、買替え資産
を取得すること。
エ.取得日の翌年12月31日までに居住、又は居住する見込みがあること。
オ.1年間の合計所得金額が3,000万円以下であること。
カ.譲渡した土地が500㎡を超えるときは、500㎡を超える部分は除く。
キ.譲渡先が親族など特別な間柄でないこと。
ク.取得した家屋の居住部分の床面積が50㎡以上であること。
ケ.譲渡した年の前年及び前々年に、この特例を受けていないこと。
④特定の居住用財産の譲渡損失の繰越控除
居住用財産の譲渡で譲渡損失が発生した場合には、譲渡した年の翌年以後3年内の各年分(住民税の場合は、譲渡した年の翌々年度以後3年度間の各年度分)の総所得金額から、譲渡損失の金額を控除(住宅ローンの残高から譲渡価格を控除した残高が限度となります。)することができます。
また、当該譲渡資産の譲渡による所得以外の所得との通算及び翌年以降の繰越しを行うこともできます。
主な要件は以下のとおりです。
〈適用要件〉
ア.譲渡した年の1月1日現在で、所有期間が5年を超える自己の居住用財
産であること。
イ.譲渡契約締結日の前日にその資産に係る一定の住宅ローンを有すること。
ウ.平成16年1月1日から平成18年12月31日までに譲渡していること。
エ.1年間の合計所得金額が3,000万円以下であること。
オ.譲渡先が親族などの特別な間柄でないこと。
◎居住用財産の長期譲渡所得の特例
以下の要件にあてはまる場合には、税額の計算の際、通常よりも低い
税率で計算する特例が受けられます。
なお、居住用財産の譲渡に関する3,000万円の特別控除とは重複して
適用することができますが、居住用財産の買い替えの特例とは重複して
適用できません。
〈適用要件〉
ア.譲渡した年の1月1日において、所有期間が10年を超えていること。
イ.譲渡した年の前年及び前々年にこの特例を受けていないこと。
ウ.譲渡先が親族などの特別な間柄でないこと。
エ.減に自己の居住の用に供している家屋やその敷地の譲渡であること。
※以前に自己の居住の用に供していた家屋やその敷地の譲渡の場合
には、居住しなくなった日から3年目の年の12月31日までに譲渡して
いること。
課税長期譲渡所得 税率
6,000万円以下の部分 所得税10%・住民税4%
6,000万円超の部分 所得税15%・住民税5%
◎優良住宅地の造成等のために、土地等を譲渡した場合の長期譲渡
所得の特例
譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超える土地等を、
以下のように優良な住宅地の供給等に寄与するために譲渡した
場合などは、一般の長期譲渡所得の場合よりも低い税率が適用
されます。
〈適用される譲渡の例〉
ア.国、地方公共団体等に対する土地等の譲渡。
イ.都市基盤整備公団などの行う住宅建設または、
宅地造成の用に供するための土地等の譲渡。
ウ.収用交換などによる土地の譲渡。
エ.第一種市街地再開発事業の用に供するために土地等が
当該事業の施行者に買い取られた場合。
オ.都市計画法の開発許可等を受けて行う住宅地造成の用に
供するための土地等の譲渡。
譲渡の時期 課税長期譲渡所得 税率
平成15/12/31まで 4,000万円以下の部分 所得税15%・住民税5%
4,000万円超の部分 所得税20%・住民税6%
平成16/1/1~ 2,000万円以下の部分 所得税10%・住民税4%
平成20/12/31まで 2,000万円超の部分 所得税15%・住民税5%
〔申告と納税〕
譲渡した翌年の2月16日から3月15日までに申告時の住所地を所轄する税務署に所得税の確定申告をして納めます。
なお、特別控除や特例の適用を受けることによって納める額がなくなる場合でも、確定申告をしないとこれらの特例を受けることはできません。
住民税は、所得税の申告をもとに区市町村が税額を計算し、納税通知書を送付しますので、それによって納めます。
以上、不動産を譲渡した際に係る所得税や住民税について記載させて頂きました。
この譲渡による税金の中でも、特に長期譲渡所得の場合と短期譲渡所得の場合の税金の計算方法は重要です。
この長期・短期譲渡所得の特徴は5年を境に支払う税金が大きくかわってくるという部分です。
譲渡するその時期が5年を超えるのか、超えないのかはよくよく確認の上、手続きを行ってください。
また、譲渡の場合は控除の種類もたくさんあり、どの控除が適用できるか等で、お悩みの方もかなり多いようです。
控除等については、弊社のホームページ内の『税金の基礎知識』にわかり易い表にまとめてありますので、下記のURLもしくはオフィシャルサイト(HP)から確認してみて下さい。
URL:http//www.welworks-web.com/
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投稿者: welworks 日時: 2006年08月06日 10:16 | パーマリンク